【話題】 ジャック・アタリ氏 「北朝鮮は第3次世界大戦のトリガーになり得る」

第3次世界大戦が起きる可能性はあるのか。「ヨーロッパ最高の知性」と称されるジャック・アタリ氏が、
産官学の各界が連携する「日本アカデメイア」主催のシンポジウム「東京会議」出席のために来日した。

4時間におよぶシンポジウムの中でアタリ氏は、「2020年の最大の問題は北朝鮮だ」と明言した。

――米国が凋落し、中国も覇権を奪えないという極めて不安定な世界を予見するアタリ氏。
第3次世界大戦の可能性について語り始める時、真っ先にカギを握る国として北朝鮮の名を上げた。

第3次世界大戦を避けられるか。それはできると思います。しかし「回避は可能である」と思わなければ、避けることはできません。

2020年の最大の問題は北朝鮮です。今、北朝鮮の脅威について十分に議論されていないと思います。
ミサイルや核兵器の開発を許し、北朝鮮がミニチュア化されたミサイルや核兵器を造るのであれば、イランも同じことをするでしょう。
どの国も同じことをするでしょう。韓国や日本もそういうことをしたいと思うかもしれません。そうなれば、これは核不拡散レジームの終焉しゅうえんとなります。

第1次世界大戦の時はロシアとポーランドが対立し、そして他の国もいくつか入って、いろいろなばかげた偶発的なことで戦争が起こりました。
ですから、このようなローカルな問題を発生させてはなりません。

トランプ大統領が彼(金正恩朝鮮労働党委員長)と会ったのは恥ずべきことだったと思います。
イギリスのチェンバレン首相とフランスのダラディエ首相がヒトラー総統と会ったのと同じくらい、恥ずべきことだった。

(1938年、ミュンヘンで行われた)この会談が戦争へのプロセスを加速化したと言わなければいけません。
手遅れになる前に何かをしなければいけないと思います。

――北朝鮮の危機が手遅れになる前に手を打つにはどうしたらいいか。しかし、米国、中国の2大国は、その危機に対応できないと予測する。

アメリカはグローバル戦争勃発のリスクをさらしています。そして、アメリカがその予防策を講じることも少なくなっています。
アメリカの孤立主義のスタートを切ったのはトランプ氏ではありません。オバマ大統領です。

アメリカは長い間、敵がいないと国内を整えることができなかった。敵がいることで巨大な軍事費用を出すことができたのです。
アメリカはいろいろな敵のバランスを取ってきました。インディアンだけではなくて、後になって、いろいろな敵が出てきました。
しかしソ連が崩壊すると、アメリカはどうしていいか分からなくなりました。ロシアは旧ソ連だから敵なのか、どの国は敵なのかということになりました。

ところが、そこにテロリズムが敵として出てきました。そこでアメリカはテロリストを代理敵として戦争に行くことになりました。
しかしながら、その後、それだけでは十分でないから別の敵が必要であると分かりました。

ですから、大統領の政権ごとに新しい敵を考えました。それが中国なのか、まだ最終決定は出ていません。
中国の方がロシアよりも敵なのか、決められていません。


ジャック・アタリ(Jacques Attali) 経済学者
1943年アルジェリア生まれ。フランス国立行政学院(ENA)卒業。フランス・ミッテラン仏大統領特別補佐官、欧州復興開発銀行の初代総裁などを歴任。
ソ連の崩壊、金融危機、テロの脅威、トランプ米大統領の誕生などを的中させた。
https://president.jp/articles/-/31835