【文化】左利き『矯正』はもう時代遅れ。文房具から調理用品まで、充実する「左利きグッズ」

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いま「左利きグッズ」が、静かな人気を呼んでいます。ボールペンや定規、フライ返しといった調理器具まで、多くの日用品が流通。
売店の中には、品ぞろえのよさが口コミで広がり、わざわざ海外からお客さんが訪れる所も。
「左利きを矯正すべき、という考え方は時代遅れ」「利き手にこだわらず、道具を使う楽しみを提供したい」。
店舗関係者たちは、そう言葉に力を込めます。右利きの記者が受けたのは、他人との「違い」を楽しむきっかけになる、という印象でした。

文具、調理器具に不満

物心ついた頃から、右手中心の暮らしになじんできた記者。中高時代は野球部に所属し、右投げ・右打ちの選手でした。
そんな私にとって、左利きのイメージは「サウスポー」。利き腕が異なるチームメイトのプレースタイルには、独特の魅力がありました。

しかし、日常生活で左利きの人々を意識することは、ほとんどなかったと思います。あまりにも当たり前の存在として受け入れていたからです。
そもそも当事者は、どんな場面で困りごとを抱えているのでしょうか?

文具メーカーのゼブラが2016年、全国の左利き104人に対し実施したアンケートによると、「はさみやカッターが使いにくい」が58%と最多。
更に「食事で左隣と腕がぶつかる」、「お玉でスープがすくいづらい」などが続きました。

生活雑貨ブランド「無印良品」を運営する良品計画も、ステーショナリー商品に特化した調査を12年に行っています。
約3400人の回答者中、8割近くが「左利き」または「左利きだが一部またはすべて右利きに矯正」という属性です。

左利きの人向けに、使用時に不満を感じる文房具を尋ねる項目では、「定規」「カッター」「事務用はさみ」の順に名前が挙がりました。
特に事務用はさみについては、「長年右手で使用することに慣れている。左手で使うと、かえって不便さを感じる」との回答も。

どうやら書き物や事務作業、料理などの際に、困難を感じるケースが多いようです。

家族が大けが、商品構成を変更

考えてみれば、文房具も調理器具も、ほとんどが右利きの人向けに作られたものばかり。
ホームセンターなどでは、左利き対応の製品が買える店もありますが、一般的とは言えないのが現状かもしれません。

そうした中、利き手を問わず使えるアイテムを、多数取り扱うことで人気の文具店があります。菊屋浦上商事(相模原市)です。
創業は1973年。店頭での販売に加え、左利き用を含めた文房具を、官公庁などに卸してきました。

店内の一角には「左利きグッズコーナー」と書かれたポップが。ボールペンや定規はもちろん、草刈り鎌からトランプまで、100種類超が並びます。
中にはドイツ製の鉛筆削りなど、珍しいものもちらほら。

「はさみだけで30種類以上ありますよ」。自身は両利きという、浦上裕生社長(44)が話します。

幾つか見せてもらうと、右利き用のはさみと比べ、刃の組み合わせが逆です。続いて手渡されたレードルも、よく目にするタイプと違い、
正面から見て本体の左側がすぼまっています。なぜ、こうした商品構成なのでしょうか?

「私の弟も左利きなのですが、中学生の頃、カッターで手に大けがを負いました。普通のカッターであっても、左利きの人が持つと、
刃先が体の方を向きやすく危険なんです。構造上、刃を出し入れしづらいといった大変さもあります」

店内では当時、少数ながら左利き用品を陳列していました。「でも右利きの文具を使わせてしまい、息子を守れなかった」。
そんな思いから、店長だった浦上さんの母親が、2000年に扱いを増やしたそうです。

「左利きになりたい」増える相談

近年では浦上さんが、消費者の視点から、メーカー側にアドバイスしています。

たとえば、両開きのフタ付き筆箱や、左右両方から目盛りが打ってある定規。どちらも開発前、製造各社に伝えた意見に沿った仕様です。
「実際に反映されたかについては知らされていない」と苦笑しつつ、使いやすさの追求に余念がありません。

取り組みを始め、およそ20年。店の評判は口コミやSNSで広がり、全国から利用者が詰めかけています。左利きの人はもちろん、
家族へのプレゼント用に、右利きの人が買い求めることも。時にはドイツやフランスから、観光客が訪れるケースまであるといいます。

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