貴乃花の「被害者モード」がすべての発端だった 家庭、職場…相撲協会退職
まったく悪気なく言った一言で大喧嘩になる、ということは日常生活で珍しいことではない。
結婚している方であればなおさらだろう。軽い気持ちで「これやっておいて」「好きにしていいよ」なんてことを口にしたら、
「あなたはどうしていつもそうなの」
という感じで食ってかかられたといった経験を持つ方は少なくないはずだ。
一部略
貴乃花親方の相撲協会退職
同書によれば、このモードのギャップが招いた悲劇が貴乃花親方の相撲協会退職だという。
「弟子の貴ノ岩が日馬富士に暴行を受けた時に、親方は協会に連絡することなく、警察に被害届を提出しました。
背景には、過去の様々な経緯があったことでしょう。また、真面目な貴乃花親方は平素から協会のやり方への不満や不信感を抱いていたようです。
そのため常に貴乃花親方は、協会に対して『臨戦モード』でした。一方で、協会執行部にはそこまでの緊張感はありません。暴行事件直後であっても、貴乃花部屋と正面から戦うといったモードにはなっていなかったように思われます。
そのため、いきなり臨戦モードに基づいた貴乃花親方の行動に面喰らい、また腹も立ったことでしょう。もしも、双方がモードの違いに意識的であったら、どこかで擦り合わせができたかもしれません」
この分析を裏づけるかのような発言がある。つい最近、貴乃花さんは、「週刊文春」の対談記事の中でこんなふうに当時を振り返っているのだ(2019年12月12日号)。
「事件が発覚した後はあの子(貴ノ岩)のために動いていたんですけど、いま考えると自分のためにやったところもあるような気がして」
「色んなことを想像すると、もしかしたら自分の代わりにあの子が狙われたのかもしれないと思うようになったんですよ」
つまり、協会が自分に対して攻撃をしかけてきていることを前提にした「被害者モード」の思考が当時、ベースになっていたというのだ。それゆえに貴乃花さんの反応もついつい過激な方向に走ってしまった。
家庭内や会社内でのトラブルでも、これはよく見られることだろう。「いつもいつも私ばかりに面倒を押し付けて」「常に俺を無視している」といった思いこみが片方にあると、相手方の何気ない言動が発火点となってしまうのだ。田中氏はこう語る。
「まさに、モードの違いという意識のギャップは、人間社会の地雷と呼ぶべきものなのです。自分と相手とのモードの違いというギャップ。それを埋められないのであれば、しばらく少し距離を置くというデザインが、望ましいのではないでしょうか」
これは相手の言動にカチンと来た時にも覚えておいたほうがいいことだろう。すぐに怒ったり抗議したりする前に、自分とはモードが違うかもしれない、と考えて頭を冷やすという手もあるのだ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/01030831/?all=1