【不動産】住宅ローン不正が横行する不動産業界の闇 ターゲットは「年収が低めの若者」

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2020年1月4日 6時0分

若者に住宅ローンを借りさせ、投資用不動産を買わせる不正が蔓延している。

 たとえば都内の飲食店で働く20代の男性店長は、店にかかってきた不動産業者の営業電話に引っかかった。「自己資金ゼロで投資できる」「賃料収入で毎月2万円の収益が出る」「家賃保証は20年」などと勧められ、2019年春に中古マンションを買う契約書にハンコをついた。

価格を倍近くにつり上げ、不正に住宅ローンを借りさせる
 資金は、長期固定金利の住宅ローン「フラット35」で借りた。業者の指示で、申請時に「自分で住む」と偽った。住民票は一時的に購入物件に移し、しばらくして元に戻す。物件は1度も見ていないという。

 融資額は約2600万円。全額が物件の代金として業者に流れた。その後、たしかに月十数万円の賃料が業者から振り込まれ、ローンの返済分などを差し引くと2万円余りが手元に残る。

 ただ、物件は築20年超で、私鉄線の駅から10分以上歩く。不動産情報サイトで調べると、同じ建物の同じ広さの部屋が約1300万円で売られ、募集家賃は9万円以下だ。

普通に考えれば、業者が価格を倍近くにつり上げ、不正に住宅ローンを借りさせて1000万円前後の利益をせしめている。割高な家賃はその一部が還元されているに過ぎず、途中で打ち切られるのが関の山だろう。

長期固定金利の住宅ローン「フラット35」
 テレビでもおなじみのフラット35は、独立行政法人住宅金融支援機構が民間金融機関に取り次がせて提供する住宅ローン。民間の銀行がお金を貸しにくい人でも、住まいを買えるよう後押しする使命を背負い、借り手は年収300万円前後からを対象に、正社員でなくても最長35年間の長期固定金利で貸すが、その精神が悪徳業者に逆手に取られた。

 機構は2019年12月、居住目的と偽って投資するなどの不正を162件確認したと発表した。融資額は計33億円、不正ローンに2200万円の補助金が支出されたことも明らかにした。

不正のターゲットは「年収が低めの若者」
 目的を偽ってローンを借りるのは融資契約に反するため、不正がバレた利用者は一括返済を迫られる。物件を強制処分させられ、残債を分割ででも払わされるのが一般的だが、不正利用者には年収が低めの若者が多いだけに、自己破産手続きに移る人も相次いでいる。

 ただ、機構が特定した計162件の不正事例は、都内の一部の業者が関わるものだけで、氷山の一角だ。筆者が確認できただけでも、住宅ローンの不正利用を勧める業者グループは少なくとも5つある。冒頭の飲食店店長も、まだ機構の調査を受けていない。

 しかも、不正利用はフラット35にとどまらない。確認できた範囲では、みずほ銀行楽天銀行中央労働金庫、そのほか多くの地方銀行でも、同様の不正事例がある。すべて明るみにでれば、事例は何十倍、何百倍にも膨らむはずだ。

新築シェアハウスを建て割高の価格で売りさばく
 2013年からの日本銀行の異次元緩和をきっかけに、金融機関は必死でお金を貸し出し始めた。金利が下がる分、同じ返済額でも多額のローンを組ませることができる。融資件数を伸ばすため、審査は甘くなり、不動産価格への評価もいい加減になりがちだ。倍の値段をつけた冒頭の物件はいい例だろう。

 2018年にはスルガ銀行による不正融資事件が発覚した。新築シェアハウスを建てては割高な価格で売りまくり、破格の家賃収入を約束した業者は破綻。億単位の融資を受けた数百人規模のサラリーマンが路頭に迷う事態となった。

 不動産業者は客の貯蓄額を示す預金通帳、収入を示す源泉徴収票など、ありとあらゆる審査資料を偽造しまくった。中古マンションの空室の窓にカーテンをかけ、賃貸契約書を捏造して高利回りを装う例もあった。

 そうした不正に多くの行員も関与していたスルガ銀行は、金融庁から不動産投資向け融資の業務停止命令などを受けた。審査がずさんで、業者の不正を見抜けなかった実情は、ほかの銀行も大差はなかった。金融庁の監視や指導が厳しくなったことも受け、スルガ銀行の事件を機に、多くの銀行が審査を厳しくした。

不正業者の多くは処分されない
 不動産投資向け融資での不正が難しくなった裏で、漫然と続いていたのが住宅ローン不正だった。理由の1つは、不正の実行役である業者にほとんど何のおとがめもなかったことだ。

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