【リニア】静岡知事「リニアか南アルプスかといえば、迷わず南アルプスだ」「県民のために尽くす。これが仕事」

 静岡県川勝平太知事が毎日新聞の新春インタビューに応じた。水資源や自然環境への悪影響から県が着工を認めていないリニア中央新幹線静岡工区を巡り、「県民の生命、財産を預かっている立場としては、(トンネル工事が予定されている)南アルプス保全に尽きる。リニアか南アルプスかどちらを優先するのかとなった時、迷わず南アルプスだ」と力強く語った。【聞き手・山田英之、古川幸奈】

 ――昨年を振り返って。

 危機管理を常に最優先にしてきたが、台風15号、19号によって、これはもう、いつ起こっても想定内としなくてはいけないという思いを新たにした。常に災害から学ぶ姿勢は、今回も同じだった。一方で、ラグビー・ワールドカップ(W杯)は予想をはるかに上回る大成功に終わった。エコパスタジアムで日本がアイルランド代表に勝った「シズオカショック」は、試合に勝っただけでなく、会場の雰囲気も、ノーサイドスポーツマンシップも素晴らしかった。ラグビーが面白いという少年、少女も増えてきた。

 ――令和最初の正月を迎えて。

 2月23日は天皇陛下の誕生日と、富士山の日が重なる。冬の富士山は真っ白な雪に覆われて清らか。清らかさが際立つ年になり、命のもとである水の清らかさが改めて認識される年になると思う。

 ――県東部も自転車競技会場になる東京五輪パラリンピックを成功に導くには。

 サイクリストの聖地にしようという運動をしている。五輪、パラリンピック自転車競技を通して健常者と障害者がともに喜びを分かち合い、感激を共有するきっかけにしたい。自転車はCO2(二酸化炭素)を出さず、健康にも良い。レガシー(社会的遺産)も残していく。一過性に終わらせるつもりはない。

 ――リニア中央新幹線を巡る国、県、JR東海の3者協議で大切にしている考え方は。

 南アルプスとリニアの問題は、環境をとるか経済効率をとるか二者択一になった。それが昨年末の状況。私は人類の財産を守る使命を持っている。

 ――知事のリーダーシップを求める大井川流域の期待にどう応えるか。

 農業用水、水道、工業用水など、この問題には農林水産省厚生労働省経済産業省環境省が全部関わっているのではないか。国交省だけで仕切れる話ではなく、手詰まりで何もできない状態になった。水の問題があまりにも大きいので、リニアでごり押しできない状態になっている。解決するには政治的な大きな力が働かなければならないところまで来ている。

 ――来年7月に任期満了を迎える知事選について。

 1期4年間だけ負託を受けて県民のために尽くす。これが仕事。次どうしてやろうかなんて私の念頭にない。

毎日新聞2020年1月4日 10時29分(最終更新 1月4日 10時29分)
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